むーちゃん(以下M)「写真部の先輩達が「デジカメは1段位露出アンダーで撮ったほうがいいよ」と言っているのですが、それは本当なの?」
ケンケン(以下K)「むーちゃんはどう思うの?」
M「本当に1段位露出アンダーで撮ったほうが良いのならば、最初からデジカメの露出計がそう言う設定になっていると思うんですけど……」
K「そのとおりじゃな、そう言う事じゃよ」
M「え?それで終わり?(笑)」
実はフィルム時代から露出アンダーで撮ったほうがいいと言われていた
K「実はこの都市伝説は今に始まったことではなく、フィルムの時代から言われておったのじゃよ」
M「ええ!そうなの?」
K「特にポジフィルムはラチチュードが狭いので、露出計の値よりも1/3~2/3段露出アンダーで撮るプロが少なくなかったのじゃ」
M「ラチチュードって?」
K「フィルムの露出オーバーや露出アンダーがどこまで許せるかという許容範囲じゃよ」
M「それで露出アンダーで撮っていたと言う事なの?」
K「ハイライトの明るい部分を飛ばしたくないと言う理由の他に、露出アンダーで暗い写真は増感現像で救済できるからじゃよ」
M「ん?増感現像って?」
K「1段か2段位の露出アンダーなら現像時間を伸ばして、明るく救済できたのじゃよ」
M「へぇ~それは便利ですね」
K「でも逆の露出オーバーは、写真を減感現像して救済することはできないのじゃ」
M「それで露出アンダーで撮って方が安心だったのか……だったら露出アンダーで撮るのも納得出来る気がします」
K「ところがむーちゃん、増感現像をするとフィルムの粒子が荒れてしまうのじゃよ」
M「それってなんだか、デジカメのISO感度を上げたときにノイズが増えるのと似ていますね」
K「そのとおりじゃな。だから意味もなくいつも露出アンダーで撮るのは良くない習慣なのじゃよ」
M「じゃあ聞くけど、意味があって露出アンダーで撮る事ってあるの?」
適正露出に露出オーバーも露出アンダーもない!
K「カメラが決めた露出よりも露出アンダーで暗めに撮ることで、自分が伝えたい写真になるときじゃよ」
M「ああそうか……それが適正露出になるので正解なんですね」
K「そうじゃやな。適正露出はカメラではなく撮影者が決めるものだからね」
M「カメラは被写体の反射率がわからないので、反射率18%だと言い聞かせて撮っているのでしたね」
K「良く覚えていたね。そしてその18%反射率の標準反射版が、0~255段階のグレーズケールの118段目の濃度で写る時が、適正露出になるように露出計を調整してあるのじゃ」
M「それで本当の適正露出は、撮影者しかわからないのでしたね」
K「そう言う事じゃな」
M「ところでどうしてもどちらかで撮らないといけないとしたら、デジカメも露出アンダーの方がいいの?」
K「おっと!ついに来たかその質問(笑)この議論は昔から繰り広げられておる!」
「常時露出オーバー派」の言い分
- だって露出アンダーで撮った写真を後で明るくすると、シャドウ部のノイズが増えるでしょう
「常時露出アンダー派」の言い分
- だって一度露出オーバーしてしまったハイライト部は、後で補正してもディテールが出てこないでしょう
M「ケンケンはどっち派?」
K「ワシは「常時露出アンダー派」じゃな」
M「その理由は?」
K「デジカメはフィルムよりもダイナミックレンジが狭いし、一度露出オーバーしてしまったハイライト部は「白飛び」といって逆立ちしてもディテールが戻らないのじゃ」
M「ダイナミックレンジって?」
K「最初に出てきたフィルムのラチチュードと同じく、ハイライト(明るい部分)からシャドウ(暗い部分)まで、どこまでの領域が再現できるかという指標じゃよ」
M「そう言われたら確かにハイライトを失うよりは、まだシャドウ部のノイズが増えた方がマシですね」
K「禿げるよりも白髪でも髪があって良かったと思う、ワシの心境と似ておるのじゃわい」
M「それにデジカメはこの先もっともっと、ノイズ自体が少なくなっていく方向に進んで行ってますよね」
K「そうじゃな。特にRAWで撮って現像すれば、ノイズが増えることを極力減らすこともできるのじゃよ」
M「ケンケンが言うと、さっきの例えで白髪に白髪染めをして目立たなくできると言っているように聞こえます(笑)」
むーちゃんが悟った露出アンダーの都市伝説
- 露出アンダーの都市伝説はフィルム時代から存在した。
- 目指すはあくまで適正露出!
- 適正露出はカメラではなく撮影者が決めるもの。
- ハイライトを失うよりは、まだシャドウ部のノイズが増えた方がマシ。
- RAWで撮って現像すればノイズが増えることを防げる。