むーちゃん(以下M)「写真教室等でアドバイスしてもらうときに、必ず言われる「もう一歩前へ」というのはどういう意味なの?」
ケンケン(以下K)「むーちゃんは知らないだろうけど、実は男子トイレにも同じ標語が貼ってるんじゃよ」
M「それと何か関係があるの?」
K「いや、別にない……写真で「もう一歩前へ」というのは「もっと被写体に近づいて撮りましょう」と言う事なんだよ」
M「それはどうして?」
K「むーちゃんも、自分で撮った写真の被写体が、思ったより小さく写っていて不思議に感じた事はないかい?」
M「それは、いつも感じてます。不思議ですよね?」
K「理由は2つあるんだよ」
デジカメで写した被写体が思ったより小さく撮れてしまう理由
- ファインダー視野率
- 脳内ズーム
ファインダー視野率
M「ファインダー視野率ってよくカタログで見ますね」
K「光学式ファインダー(OVF)の一眼レフは、高級機以外は100%ではなく95%とか低い数字になっているだろう?」
M「あれは、どういう意味なんですか?」
K「光学式ファインダーでも説明をしたけど、ファインダー上で見える範囲と実際に写る範囲の差だよ」
M「ああそうか、思い出しました……ファインダー上で実際に写る範囲の天地左右5%は見えてませんと言う意味でしたね」
K「だからファインダー覗いて見た範囲よりも広く写るんだよ」
K「その点、むーちゃんの持っているミラーレス一眼はEVF(電子ビューファインダー)なので、ファインダー視野率は100%で見た目どおりに写っているはずなんじゃがな……」
M「うーーーん、それでも小さくこぢんまり写るのは何でなんでしょう?」
「脳内ズーム」の落とし穴
K「それは「脳内ズーム」の落とし穴にはまったんじゃよ」
M「の・のうないズーム?人間にもズームがあるの?」
K「むーちゃん、鳥の目って周りが広角レンズで、中心部が望遠レンズでドーナツ状に二重に見えてるの知ってる?」
M「はい、博物館で見たことあります。だから高い上空からネズミを見つけることが出来るんですよね」
K「人間の眼も実は視野が約120度あって、意識に応じて脳内で中心部を切り取って見ているんだよ。120度と言えば焦点距離12mmの超広角レンズじゃからな」
M「す・すごい広角ですね……」
K「人間の視覚に一番近いと言われるのが画角40度位の標準レンズ50mmでしょう……だから普通に見ている時は、120度の視野の中からそれ位をズームしているんだろうね」
M「それってデジカメで見たとおりに撮れない謎で出てきた、人間は自分に興味の無いものは無意識に見えてなくて、興味のあるものだけ都合の良いように見ていると言うのと似てますね」
K「そのとおり!ケンケンはそれを「脳内ズーム」と呼んでいるが、デジカメで言うところの、光学ズームではなくデジタルズームに似ておるな」
M「少しずつわかって来ました……ファインダーの中で集中するほど「脳内ズーム」が効いてきて、真ん中しか見えなくなると言う事ですね」
K「「周りが見えなくなる」という言葉どおり、人は誰しも緊張や集中すると「脳内ズーム」が周りを切り捨てて、中心部を引き延ばして見てしまうんだよ」
M「なるほど……ひょっとして「日の丸構図」もそれが原因ですか?」
K「そうだよ、よくわかったね。周りが見えなくなって、実際見ないでシャッターを切ってるんだよ」
M「注意深く聞くと、周りの雑音が聞こえなくなるのと似てますね」
だから「もう一歩前へ」! お好きなら2歩でも3歩でも……
K「初心者がシャッターチャンスに夢中になりながら、注意深く隅々までチェックして写真を撮るというのは実際無理でしょう?」
M「はい!全然無理です」
K「だから、「もう一歩前へ」というアドバイスがされるんだよ」
M「そうか……確かに前に出ることで、周囲の余計な物を省いて主役の被写体を大きく撮る事が出来ますね」
K「そうそう、これも「写真は引き算」の技じゃな。一歩前に出るだけで驚く程写真の雰囲気が変わるはずじゃぞ」
M「一歩じゃなくて、もっと前に出たらどんな写真が撮れるんだろう?」
K「面白い発想だね。試しに一歩踏み出すごとにシャッターを切りながら、もっともっと前に出てみると良い……」
M「あとで撮った写真を並べてみると、凄く面白そうです」
ケンケン直伝!上達のためのアドバイス
- 初心者はみんな言われる「もう一歩前へ」とは「もっと被写体に近づいて撮りましょう」と言う意味。
- 自分のカメラの「ファインダー視野率」を知って、撮影時に構図を調整しよう。
- 自分の「脳内ズーム」を意識して、撮影時に構図を調整しよう。
- 人間は集中すると文字どおり「周りが見えなくなる」。
- 1歩だけでなく、2歩も3歩も前に出て主役の被写体を大きく写して見よう。