むーちゃん(以下M)「撮った写真を後から見ると、撮影の時に見たとおりに写ってないんですけど、もっと高いカメラで撮らないとダメなのかな?」
ケンケン(以下K)「それは、見た目より暗かったり明るく写るという事?」
M「そうじゃなくて、後で見たら余計なものが写ってたり、撮りたかったものが小さくしか写ってなかったりして……」
K「ははぁ、見たとおりに写らないのはカメラのせいではなく、むーちゃんのせいだよ」
M「ええ?私が悪いの?」
K「むーちゃんに限らず、人間はみんなそういうもんなんじゃよ」
M「どういうこと?」
K「録音に例えてみるとわかりやすいじゃろう。録音した音を後で聞いたら、その時に聞こえてなかった音が録音されていたことはないかい?」
M「あ~ありますね……その時全然聞こえてなかった犬の鳴き声や遠くの救急車のサイレンとか……」
K「そして、録音時はしっかりと会話していた相手の声が小さすぎて聞き取れなかったこともあるでしょう?」
M「あるある、それでテープ起こしで困った事もありました]
自分の都合の悪いものは見えない
K「写真の場合もそれと同じじゃよ。人間というのは、自分に興味の無いものは無意識に見えてなくて、興味のあるものは自分の都合の良いように見ているんじゃよ」
M「え~そんな事ってありますか?」
K「それが誰でもあるんだな……むーちゃんは腕時計してるかな?」
M「はい、前から凄く欲しかった腕時計を、入学時にお祝いにもらいました」
K「毎日その腕時計をして、毎日何度も時間を見てるよね」
M「え~そりゃもう何度も……私は忙しい身ですから(笑)」
K「じゃあ、時計を見ないで、ここに時計の絵を描いてごらん。文字盤のデザインや色も正確にね……」
M「うーーーん、そう言われるとどう描いて良いか……」
K「だって、むーちゃん毎日何度も自分の腕時計見てるんでしょう?日付や曜日の位置や色や形は?」
M「そう言われると……」
K「これはなにもむーちゃんに限ったことではなく、自分の腕時計の絵をスラスラ描ける人はまずいないんだよね」
M「私だけじゃないんだ……」
K「むーちゃんは、毎日何度も時間は見ていたけど、時計のデザインは見ていなかったんだよ」
M「うわぁ、凄く欲しかった時計なのにショック(笑)」
「心のフィルター」を通したものしか見えない
K「人間はみんな「心のフィルター」を通したものしか見ていないんだよ。「心のフィルター」は人それぞれ異なるから、人それぞれ見えているものが違うんだね」
M「何となくわかる気がします……同じ通学路でも、気持ちが楽しいときと悲しいときで世界が違って見えます」
K「財布を無くして焦っていたら、目の前にあった財布が見えなかったこともあるだろう?」
M「ああ!あります、あります(笑)」
K「まずは自分が「心のフィルター」というものを持っていて、それを通して見たり聞いたり感じていると言う事を自覚してごらん」
カメラに心を持たせよう
M「カメ吉はどうなんですか?」
K「カメ吉は正直者だ。そこにあるものをあるがままに見ておる」
M「カメラは人間ではないので「心のフィルター」というものが無いんですね」
K「そのとおり、現実をレンズを通して記録するだけじゃよ。でも、真実を記録するカメラに、むーちゃんが自分の気持ちを入れてやればいいんだよ。そうすればカメラも心を持ってくれるはずじゃよ」
M「おまじないですか?」
K「おまじないではなく、カメラがどう見えているのかを知り、「そうじゃないよ、私はこう見えてるよ」と設定を通してカメラに伝えることじゃよ。撮影ごとにそれを繰り返すのじゃ」
M「なるほど、そういうことか……」
K「カメラがどう見えているのかを知ることが、すなわち失敗じゃよ」
M「ああ!そうか!最初に私が見たとおりに写ってなかったと言った写真が、カメ吉が見た真実の世界だったんですね」
K「そのとおり……撮影時にもっと前に出て大きく主体に近づき、同時に余分なものを画面の外に追い出せば、むーちゃんの見た世界に近づくんじゃないかな?」
M「それで、「写真は引き算」と言われるんですね」
K「今日のむーちゃんは冴えてるね」
M「あは!ケンケンも冴えてるね」
K「一言余計じゃ!」
ケンケン直伝!上達のためのアドバイス
- 人間は自分の都合の悪いものが見えない。
- 人間は興味のあるものだけ、都合の良いように見ている。
- 人間はみんな「心のフィルター」を通したものしか見えてない。
- 「心のフィルター」は人それぞれ異なるので、人それぞれ見えている世界が違う。
- カメラは人間ではないので「心のフィルター」というものが無い。
- カメラは現実をレンズを通して記録するだけ。
- まずは、カメラがどう見えているのかを理解する。
- 自分が見えている世界を、設定を通してカメラに伝える。
- 何度も言うけど「写真は引き算」。