むーちゃん(以下M)「全面ピント合わせて撮るか、一部ぼかして撮るか、いつも迷うんですけど、何か決め手はありますか?」
ケンケン(以下K)「パンフォーカスで画面の隅々までパリッとピントを持ってくるか、それとも、とろけるようなボケで今流行のゆるい写真にするか……むーちゃんが決めて撮らないことには、成り行き任せのどっちつかずの写真が撮れてしまうからな……」
M「優柔不断な私の撮った写真は、そのどっちつかずの写真ばかりで嫌になります」
K「確実なのは、撮影現場にいるむーちゃんしか感動はわからないと言う事だよ。その感動を上手くカメラに伝えてやらないと、中途半端な感動の伝わらない写真になってしまうのは当然じゃよ」
M「せっかくパンフォーカスとボケのつくり方を覚えたのに、このままだと宝の持ち腐れになってしまいます」
K「まずはパンフォーカスとボケの特徴を一緒に整理してみるのじゃ」
M「賛成!」
パンフォーカスとは?
K「まずはパンフォーカスってどんなんだったっけ?」
M「えーと、パンフォーカスは写真画面の近くから遠くまで全部にピントが合ったように見せるテクニックです」
K「そのとおり!実は人間の視覚はパンフォーカスだと言われてるのじゃよ
M「そうなんですか?」
K「人間の眼は写真の様に一度に全ての空間にピントを合わせるのではなく、随時ピントを合わせながら見渡した光景を脳の中で合成してパンフォーカス化しているのじゃ」
M「へぇ~パノラマ合成みたいで人間の眼って凄いですね……確かに先ほど入った書店の光景も、看板の文字から店内全部の書棚の本のタイトルまで全てピントの合った光景として頭の中では記憶しています」
K「そう言う意味では、パンフォーカスは人間が見た世界を表現した写真と言う事になるのじゃ」
ボケのある写真とは?
M「じゃあボケのある写真はどうなの?」
K「ボケのある写真というのは、画面に一部にしかピントが合っていない写真と言う事になるのじゃ。ケンケンの様に近視の犬は近くのモノ以外はボケて見えてるからな……」
M「ええ?犬はそんな風に見えてるの?(笑)」
K「いずれにしても、人間の肉眼では見ることの出来ない世界じゃな。そういえば、フィリップ・バーロウという写真家が、高画質が当たり前になった現代の写真を真逆に表現して、近視の人達が裸眼で見ているピントのボケた世界を表現して話題になったのじゃ」
M「それって、クール!!」
K「そう!今むーちゃんが言ったとおり、ボケはクールなものとして世界中で惹かれる人が増えているのじゃよ」
M「へぇ~じゃあボカした方がかっこいいのか……」
K「フィルムカメラからデジカメが主流になった今、スマホを筆頭にセンサーが小型化されたので、ぼけた写真を目にする機会が随分と減ったからな……」
M「ああ、それでボケた写真が新鮮に見えるのか……」
K「ただ、クールだからぼかした方が良いというのは間違いで、それぞれに見合った表現力と言うのがあるのじゃよ」
M「その、それぞれの表現力というものを教えてください」
K「まずパンフォーカスはこんな感じかな……」
パンフォーカスの表現力
- ダイナミックな力強さと表現力を持つ。
- 人間の視覚に近いために現実感が増し真実を伝えやすい。
- 全てにフォーカスされているので主役がわかりづらい。
- 報道写真・スナップ・風景写真・建築写真・インテリア写真などに向いている。
M「うんうん、何となくわかります」
K「ケンケンから言わせてもらえば、パンフォーカスとは初めてコンタクトレンズを入れたときの感動と同じじゃな」
M「あはは、私もコンタクトなのでその気持ちわかります(笑)」
K「さて、次はぼかした写真の表現力だが……」
ボケによる写真の表現力
- 周りをぼかすことで主題を主張して見せることが出来る。
- ピントの強弱で立体感を出して、奥行きを表現出来る。
- ぼかすことで想像させることが出来る。
- ポートレート・心象風景・イメージ写真などに向いている。
M「なるほど……よくわかります」
K「これでもうパンフォーカスで撮るか、ぼかして撮るか迷うことはなくなるじゃろう」
M「はい、私もそう思います。迷ったら、ドロップが食べたいか綿菓子が食べたいかで決める事にします」
K「まぁ、それも悪くないであろう(笑)」
ケンケン直伝!上達のためのアドバイス
- パンフォーカスで撮るか、ぼかして撮るか迷ったら、シャープに見せたいか、ゆるく見せたいかで決めよう。
- 感動を言葉にしてみると、どちらで撮るか決めやすくなる。
- 「パンフォーカスの表現力」と「ボケによる写真の表現力」の違いを頭に入れておこう。