フィルムカメラは極めてシンプル
むーちゃん(以下M)「この前フィルムで撮る銀塩カメラを手にしたんですが、あまりのシンプルさに拍子抜けしました」
ケンケン(以下K)「ボディーにはシャッターボタン以外に、ISO感度設定とシャッター速度のダイヤルしかついてなかったじゃろう?」
M「はい、絞りはレンズに付いている絞りリングで調整すると教えてもらいました」
K「使い方も極めて簡単じゃよ。その時々の撮影条件に合わせて選んだフィルムをカメラに入れて、ISO感度を設定する。あとは絞りとシャッター速度の調整しかないのじゃ」
M「簡単ですね!誰でもすぐに使えそうです。でも、そんなんでまともに写るんですか?」
K「デジタルカメラが生まれるまでは、写真はプロもアマもみんなそうやって撮っていたのじゃよ。今のデジカメのように設定項目が多くないので、そのぶん被写体に集中できたのじゃ」
デジカメに設定項目が多いワケ
M「同じ写真を撮るカメラなのに、今のデジカメはどうしてあれほどたくさんのボタンやスイッチが所狭しとぎっしりあるの?」
K「カメラが電機製品になったからじゃよ。撮った結果がその場でわかるようになったので、撮影スタイルが大きく変わったのじゃ」
M「え?え?どういう事?」
K「フィルム時代にラボに任せていた様々な調整を、撮影時にデジカメでする様になったのじゃ。そのためのボタンやスイッチじゃよ」
M「ん?ラボって?」
K「フィルムに写った像は、現像やプリントしてもらわないと画像が見えないじゃろう?そのための処理をしてもらう所じゃよ」
M「ああ、なるほど……毎回面倒だったんですね」
K「ラボで現像やプリントしてもらうときに、自分のイメージどおりの写真に仕上がるように、色々注文を付けていたのじゃ。今はその注文をラボではなく、デジカメの設定にするようになっただけじゃよ」
M「それで、みんな撮影中液晶画面を見ては設定をあれこれ変えたりしてるんですね……」
K「そうじゃな。撮影会やワークショップで見ていると、みんなうつむいてカメラの設定をあれこれ悩みながら変えているので面白い光景じゃな(笑)」
M「多分私も無意識にそうなっていると思います……」
カメラよりも被写体と向き合おう
K「やっと設定が終わると同時に、顔を上げて直ぐに被写体を撮り始める……本当は、カメラと向き合う以上に被写体と向き合って観察しながら撮って欲しいのじゃがな……」
M「ひょっとして今もフィルムで撮影している人は、そういう煩わしいデジカメの設定に悩むことなく、被写体としっかり向き合いたいからかも知れませんね」
K「むーちゃん、良いこと言うね。じつはデジカメでも、フィルムカメラのように被写体としっかり向き合いながらシンプルに撮る裏技があるのじゃよ」
M「え!本当ですか?」
RAWで撮れば銀塩カメラと同じになる
K「実に簡単じゃよ。RAWで撮れば銀塩カメラと同じになるのじゃよ」
M「ええ?どういうこと?」
K「まず、意外と知られてないけど、せっかくカメラ側で設定してもRAWデータに反映されない項目がたくさんあるのじゃよ」
M「知りませんでした。どういうの?」
K「たくさんあるので、書いてあげよう」
RAWデータに反映されない設定項目
- 仕上がり設定(ピクチャーコントロール、ピクチャースタイルなど)
- ダイナミックレンジ拡張(レンジコントロールなど)
- シャープネス(超解像など)
- コントラスト
- アートフィルター系(クリエイティブコントロールモードなど)
- シーンモード系(スポーツ、ポートレート、風景など)
- 色空間(sRGB、Adobe RGBなど)
- ブラケット撮影
- HDR撮影
- デジタル赤目補正
M「ええ!こんなにも反映されないの?じゃあRAWデータは、ダメダメじゃないですか(笑)」
K「何を言っておるのじゃ(笑)フィルムが撮影後に現像するのと同じように、RAWデータも撮影後に現像(パソコン上で)するのじゃよ」
M「なるほど……本当にフィルムで撮ってるみたいですね」
K「その時に出来る事も書いてみるのじゃ」
RAW現像時に設定できる項目
- ホワイトバランス
- 仕上がり設定(ピクチャーコントロール、ピクチャースタイルなど)
- ダイナミックレンジ拡張(レンジコントロールなど)
- シャープネス(超解像など)
- コントラスト
- 色空間(sRGB、Adobe RGBなど)
- 彩度
- 色相
M「ああ!カメラ側の設定で反映されなかった項目が、RAW現像時に設定できるんだ……凄いです」
K「つまり撮影時のバタバタ設定ではなく、撮影後の現像時にじっくりイメージどおりに仕上げるフィルム式のやり方じゃな」
M「それにカメラの小さな液晶画面ではなく、キャリブレーションした大型ディスプレイで正確な調整ができるので便利かも……」
K「よくわかったね。でも、撮影後(RAW現像時)に変更できない項目というのが3つほどあるんのじゃよ」
撮影後(RAW現像時)に変更できない項目
- 絞り
- シャッタースピード
- ISO感度
M「ああ!これって、まさしくフィルムカメラにあったのと同じ設定項目だ……」
K「RAWで撮る事は、すなわちフィルムで撮るのと同じシステムになるのじゃよ」
M「たしかに、これだと撮影時にたくさんの設定でカメラと向き合わなくて良いぶん、たくさん被写体と向き合う事ができますね」
K「こちらの方が本来の写真の取り方に近い気がするのじゃよ」
M「うんうん、私もそう感じます」
むーちゃんの写真上達のポイント
- フィルムカメラのシンプルさを見直そう。
- 基本は「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つだけ。
- 撮影中は、カメラよりも被写体と向き合あおう。
- 撮影中はカメラの設定に戸惑わず、RAWで撮影してみよう。
- 自分のカメラのRAWデータに反映されない設定項目を押さえておこう。
- RAW現像時に設定できる項目も知っておこう。
- カメラによっては、RAW 画像を消去すると同時に記録したJpeg画像も消える。